オバマ政権が変わってきた。どの様に変わってきたかというと、ズバリあの「大本営」の様になったという事だ。真珠湾はともかく、ミッドウェイ海戦以後の局地戦で劣勢になり始めた日本はその実態を隠し、敢えて楽観的観測を国民に流すことで事態の打開を図ろうとしたのがあの大本営発表である。
まずこの二日間にCITIやバンカメの会長が「1~2月は儲かった」「追加資金は入らない」と言い始めた。この声明を聞いて最初は始まったストレステストに対し、銀行経営者が保身から強がりを言っていると考えた。しかし本日、GM(ゼネラルモータース)までも「追加資金は要らない」言い始めたのだ。このGMの声明を聞いて確信した。これはまちがいなく政権の意向である。彼らは全員が既に政府の資金が入った身。政府に言わされているのである。
先駆けはオバマ自身が昨日のビジネスフォーラムで「今の米国経済は皆が考える程実は悪くはない」と言ってのけた事だ。これまで彼は「最悪はこれから来る、だから今は頑張るしかない」と言い続けていた。ところが昨日は一転してその立場を変えたのである。
振り返るとここでダウ1500の可能性を述べた1週間前、米国市場の雰囲気は暗黒そのものだった。そしてそこまで追い込まれた米国は恐らくサマーズ経済企画庁長官が中心となり苦肉の策を出した。それがこの「大本営発表」である。繰り返すと、この大本営発表の黒幕はオバマでもガイトナー財務長官でもない。サマーズ長官の可能性が高い。
だがその内容はあまりにもお粗末だ。中央銀行がここまで金利を下げた以上、貸出金利との差からCITIやバンカメといった大手銀行でフローの利益が上がるのは当然だ。ただ今回の金融危機の本質はフローではなく不良資産である。しかしこの問題には全く改善策が見当たらない。恐らく最後は税金で処理する以外に策は無いが、今の様に逮捕者を出さずしてその案が議会を通る事はない。だからFED(中央銀行)が間もなくスタートするTALF(不良資産担保融資)で代行するのだ。この週末にバーナンケ中央銀行総裁が異例の民放テレビ番組に出演するのはその地ならしである。そしてこの大本営発表が「子供騙し」である究極的な証明はGMだ。GMが「追加資金は必要ない」と言ったのはやりすぎだった。
ではそこまでしてなぜ政府は方向性を変えたのか。一つは週末からの20カ国蔵相会議だ。これは4月の金融サミットの前哨戦。この最大の山場に向け、米国は他国に対して何としても虚勢を張る必要があったのだ。また既に承認された景気刺激策の効果を最大限引き出すためには今の株式市場の雰囲気をどうしても変える必要性がある。そこでここはオバマとガイトナーがその意見を主張するサマーズに一歩譲り、金融危機発生後からの主眼である「取り締まり」から、未来に向けての「希望」へと市場管理のギアを換えたのだろう。これが今の米国の姿である。
ただ国内の米国人以外にこの大本営発表は通用しない。従って全て知った上で世界がどこまで米国この芝居に付き合うか。それが次の相場となる。ただ個人的本音は株の戻りがあれば助かる。なぜならそこでこの国から逃げ出せるからだ。余裕のない「大本営発表」はすでに米国の負けいくさを示唆している・・。
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