2009年3月18日水曜日

感動のないスポーツ(一部前項の重複)

共和党の重鎮、グラムジー上院議員が「AIG関係者は皆の前に出て土下座して謝罪しろ。こういう場合日本なら、辞任か、または自殺する」とAIGを激しく糾弾した。しかし政治家としてやややり過ぎた表現だったかもしれない。「死んで詫びろ」とまで言われたAIGに返って反撃の機会を与えてしまったようだ。いずれにしても政治家もAIG一人を悪玉に祭り上げる事で地元民に対して点数稼ぎをしているのも事実だ。ポイントはこの問題がGSなどを含めた他の金融機関に波及するかどうか。金融機関の安定化を命題として抱える政府や議会が中途半端なガス抜きを繰り返している現状では、AIG糾弾も実はショーにすぎない。言い換えると、今米国が本当に病んでいるのはそのMIND(心)だ。だが今の米国は心の問題をシステムの問題とすり替えて議論している。

ところで本日「WBC」では再び日韓戦がある。常に日韓戦は国の威信をかけた戦いとなり面白い。それに比べ、米国のWBC代表チームの存在は中途半端である事は否めない。ただしこの米国チームに一流選手がいないわけではない。全体としては超一流ではないが二流でもない印象だ。そしてこの代表チームのメンバーで気付いた事がある。それは全体が一流半流のチームでも間違いなく米国を代表する3人の選手が含まれている。そしてその3人にはある共通点があった。まずその3人とはヤンキースのDジーターとブレーブスのCジョーンズ、更にアストロズのRオズワルドである。それぞれベテランの域に入ったこの3人に共通点は、彼らは大リーグでは珍しく一つのチームにずっと所属している事。日本でも有名なDジーターはヤンキースを代表する選手。言わば大リーグの顔でもあり不思議はない。だが他の二人はなぜ一つのチームに拘るのか。確かにブレーブスとアストロズは強豪チーム。いつでも優勝を狙えるチームに属する事は重要なファクターだろう。だが彼等ならもっと高いオファーで引き抜ぬかれても不思議はなかった。今大リーグでは多くの一流選手が地元が失望してもより高いオファーがあれば簡単に移籍する時代だ。私にはこの3人が同じチームで頑張っている事と、全く金にならないWBCに彼らが参加している事は無関係とは思えない。恐らく彼には他の選手にはないスピリット(魂)が」あるのではないか。

そもそも80年に大学生で構成されたアイスホッケーの米国の五輪チームは最初はソ連のBチームにさえ敗北した。そしてアフガン侵攻を切欠に既にカーターがモスクワ五輪のボイコットを表明したにもかかわらず、ブレジネフが米国での冬季五輪に大選手団を送り込んだのはソ連の国威を米国大陸で示す事に意義を見出したからだと言われた。その中心が当時圧倒的強さを誇ったアイスホッケーのナショナルチームだ。彼らは皆が軍人の肩書を持った実質プロ集団。その赤い集団はオリンピックを盛り上げるために事前にマジソンスクエアーガーデンで行われたNHL(米国アイスホッケーリーグ)との親善試合で米国のプロ選抜チームを簡単にねじ伏せた。しかし数々の葛藤を経て成長した米国の「学生チーム」は本番で奇跡を起こした。しかしどうやって彼らは奇跡を超したのか。最早地球上のどのプロ集団からも味わう事はないと考えていた敗北の味を経験したソ連ナショナルチームの一人は「CAN NOT BE POSSIBLE」との言葉を残し米国チームの変化(成長)に驚嘆した。そして当時実況を担当し今は米国のスポーツ解説の大御所としてNBCでフットボール解説をするAL MICAELESは言った。「恐らくプロ同士では米国はソ連に勝てなかった。だが無垢で無欲の若者だからこそ奇跡がお起きたと」。

米国が80年代初頭の国威のどん底から立ち上がるのはこの後だ。恐らくどん底の中でこそ奇跡を起こすスピリット(魂)は生まれる。だとすればお金しか見えていない今のこの国のスポーツに感動がないのは当然かもしれない。そしてそれは80年の冬季五輪の時節とは逆に、米国の国威を低下の前触れではないだろうか。

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