2009年3月25日水曜日

株は国家なり

最近見た日本のドラマでは準主役として「吉田茂」を登場させるモノが多かった。学生時代に読んだ「落日燃ゆ」はその後の人生感で多大な影響を受けた小説だったので、先週民放で放送された同番組は思わず見てしまった。また通常NHKは意図してドラマを作ると考えているので、なぜ今「白洲次郎」をやるのか。その背景を探るためにこちらも見た。

同時代なので当然だが、共に反戦の立場を貫きながら戦犯として死んだ広田弘毅と徴兵を逃れた白洲次郎の人生には正反対の結果が待っていた。ところがこの二人に同じ距離でまとわりつくのが吉田茂の存在である。吉田茂とはどういう人間だったのか。各論はともかく彼が戦後の日本の枠組み、即ちそれは現在に続く米国との関係の基礎を築いてしまった大悪人か英雄のどちらかである事は間違いない。そしてその吉田茂の大礒の邸宅が焼失した。警察では不審火の可能性もあるというが、吉田邸と前後し住友やモルガンなどの歴史的な邸宅が焼失したと聞けば、この仕事をしている人はその脈絡に気づくはずだ。これは最近ブーム?の「陰謀説」を信奉している誰かによるテロではないかと。

ところでこの種の陰謀説で必ず登場するの名前は世界的にはロスチャイルドにロックファラーだ。そしてそのような名前と日本の混乱期の実力者との関係もしばしマニアの間ではもて囃される。だが知る限りにおいて確証を証明した話は少なく、吉田茂は政治家として高所から混乱に対峙したので陰謀に直接関わる可能性は低かったはずだ。だが確かに吉田の手先だった白洲次郎はそのカッコよさのブームとは裏腹にロスチャイルドの出先だったウォーバーグに在籍した事実からもどこか胡散臭い。

そもそも私の中では白洲次郎は竹中平蔵そのものだ。彼は復興期に外貨獲得を目的に重要産業の外資への売却を試みた。石油会社を始め、新日鉄を安値で英国に売り渡す画策をした話は有名。結果論だが、新日鉄がなければ後の高度成長はどうなっていたか。この点が郵政民営化と米国債投資投資をセットで主張した竹中平蔵と重なる。そして占領下における白洲のカッコいい逸話だけ取り上げてドラマ化したNHKの意図がいぶかしく感じられる。

ただ笑い話もあった。それは吉田の孫の麻生首相の発言。首相は証券会社を「株屋」呼び、「株をやる人はどこか胡散臭い」と言ったのは傑作だった。「株屋」の自分が言うのだから間違いない。その通りである。また儒教国家の日本ではその精神が本来存続してよい。だが傑作なのは、だったら日本の首相として「株式は国家なり」が国是だった米国に追随し、その米国のためにせっせと様々な証券を購入している日本の国益はどうなるのか。麻生氏の発言は真実である一方、首相として正反対の状態に置かれてた日本に対しての認識と補足がない。これは彼がいかに何も理解していないかを証明した。いずれにしてもその日米関係の基礎が吉田茂という祖父によって構築された皮肉からもこの発言は近年稀にみる笑い話、或いは日本史上の国益のボトムの象徴となることを願う・・。


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