2009年3月19日木曜日

ポピュリズム(大衆迎合)の恐怖

フリーハンドのバーナンケFEDの発表に債券市場は常軌を逸した反応をみせた。そんな中AIGボーナスの一件は新たな屈折を見せ始めている。まずAIGの一件はガス抜きで終わる可能性も示唆したが、実際は逆になった。具体的には庶民には株が大暴落した以外に実態が見えなかった金融危機の背景が、AIGのボーナス調査を切欠に次々に暴かれようとしている事だ。

まず今日はAIGに投下された国税が「売国奴」のAIGのトレーデイングデスク関係者にボーナスとして支払われた事以外にドイツ銀行を通してヘッジファンドに数百億円単位で渡った事が各新聞で暴露された。ヘッジファンドは米国経済の崩壊シナリオに投資した訳だが、国民は自らが困窮する中でその血税が困窮を期待していた筋を助けるという現実を理解し始めたのだ。

その商品がCDS(保険商品)にせよ、それ事態は当然の契約の履行。だから政府や議会の関係者も仕組みを理解できた人は仕方ないと判断して次々に救済案を出した。だがここにきてその仕組みが一般庶民まで浸透すると、その事実に対して国民は理性を失いつつある。そんな中でまず慌てたのは上院金融委員長のクリスドットだ。

彼は10月の金融救済法案成立から今に至るまで、議会の中枢として救済案の全てを認めてきた立場。だが本日、彼が早くからAIGのボーナスを承知していた事が明らかになり、ドット議員はそれは財務省が決めた事を追認しただけだと財務省にすべての責任をなすりつけ始めた。一方下院で同じ立場のバーニーフランクは本日議会証言に立ったAIG会長にボーナスをもらった社員全員の名簿を提出せよと強く要求。国民に向けて点数稼ぎに成功した。だが彼はその容貌通り本当はドット議員以上のタヌキかもしれない。

そしてAIG会長はリストに載った社員とその家族の「身の安全」が現状では保障できないと情報の公開を拒否。本当に AIGの関係者の身の安全にまで話が及ぶほどの事態ならそれはただ事ではない。個人的にまだそこまで実感はないが、だが一旦民衆の感情に火がつくととんでもない事態を招く事は政治家が一番知っている。

そもそも300年前に清教徒革命を成功させ、議会政治の基を築いたはずのあのクロムウェルでさえも死後に隠された部分が明らかになると逆上した英国民によって墓を暴かれた上に遺族はギロチンにかけらた。民衆とは300年たっても恐ろしい。今の時代は命までは取られないだろうが、重鎮のクリスドットでさえ政治生命の保証はないのである。

そんな中で全ての責任を負わされる可能性が出てきたガイトナーは危ない。週初に彼が年内で財務長官を辞めるかどうかの先物が20%の確率で取引されている話をした。個人的感触ではそのプレミアムは「買い」だ。しかしだとすれば残酷だ。そもそも財務省はガイトナー以外にも7人の上級スタッフの就任に議会承認が必要な特別な役所。ところが政権発足時のバックグラウンド調査の不備が尾を引いて未だに半分のポストが埋まらない状態である。今はその空白をガイトナー人が埋めている状態であり、彼は就任以来朝は5時から出勤して夜は11時まで帰らない生活が続いていると言われている。

どこかの国でも一人が3大臣を兼ねているが、そんなガイトナーをオバマも政権を持続させる為には切らなければならない時がくるかもしれない。だがそれが政治・・。

そんなポピュリズムが台頭する中、どこまでも能天気な市場はあれ程期待したガイトナーを簡単に見捨て、今は昨年まで無能呼ばわりしたバーナンケを崇めたてている。それが市場の本質である事は言うまでもないが、だとすれば米国が正しい事をしない限りいずれはその反動がこの市場に再び襲いかかるという事である。




0 件のコメント: