2010年2月24日水曜日

ハドソン川の向こう側

ケースシラー指数では幾つかの都市の住宅価格が年率で上昇した事が確認された。だが全体としては底ばい。これが好い事なのか、悪い事なのかは株のチャートと比べれるのがよい。株が安値からこれだけ戻っても住宅立ち直っていない事をどう見るか。住宅は庶民の財布。庶民はこのまま株が上昇すればいずれは住宅も上がると希望を抱いている。だがその妄想にも時間切れがある。繰り返すが、米国の住宅市場の上昇を支えた金額は紙幣を積み重ねれば月まで到達する様な天文学的な数値だ。一方で現実のマネーサプライ1月から全く伸びていない

そしてこの状況でFEDは3倍にしたバランスシートを縮小するという。本来FEDはバランスシートを縮小するのではなく、2006~07年のピーク時に優に1000兆円を超えたM3(FEDが発表止めた2006年3月で900兆円)に迫るまで拡大させなければならない。さもないと庶民の淡い期待は時間切れを迎えるだろう。だがそれはFEDのバランスシートが2兆ドルを超えた今の時点でここまで大騒ぎするようでは今の段階での選択肢ではない。

ではこのまま株と住宅の戻りの格差が放置されたらどうなるか。ソレはそのまま庶民の怒りに直結する。なぜなら株が戻るとそのままWSの給料に直結するからだ。米国民は最早それに冷静ではいられない。要するに株が上がっても住宅価格が追いつかないと国民の怒りのエネルギーは益々FEDと民主党に圧力をかける。結局それは株の悪材料になる。そして株は住宅価格を押し上げる前に株の方が住宅価格に近づいてしまう(下落)。するとここまでの資産効果は消滅し、再び住宅市場の下落トレンドが始まる。これが予想される負のメカニズムだ。一体を誰が止めるのか。

そしてその象徴となった消費者信頼度指数を受け、CNBCのアナウンサーが面白い事を言っていた。「ハドソン川の向こうは別の国かもしれない・・。」この男性アナウンサーはイギリス訛りが激しいので普段は耳を傾けない。だがこの表現は流石イギリスン人。グリーンスパンも遠巻きに同じような事を言ったらしいが、まあ今頃気づいても遅い。もうこの国の政治と経済のバランスはとっくに脱輪状態になっている。

ただそんな米国でも相変わらず原理原則を言うの共和党保守派。その旗頭のロンポールがこれはこれで面白い発言をしていた。彼は経済においてはオーストリー学派の正論をきちんと学んだ。従ってその強烈なFED批判もいい加減な根拠ではない。そして彼は「ソ連が冷戦に負けたのは軍事力で負けたのではなく最後は国家が破産して負けた。このままだと米国が次のソ連になる。」と米国の現状に対して警告を発していた。バーナンケは明日からの議会証言で彼から同じ事を言われるかもしれない。だが財政赤字は成長が続く限り先送り可能と考える。財政が国を滅ぼすとしたらそれは成長が止まる事による間接的な影響からだろう。

その点をみると今の米国は成長軌道に戻るの為の民主主義と資本主義の両輪が脱輪している状態。それを金融市場に満ち溢れる流動性が隠している。マンハッタンはそのギャンブル経済の首都。そしてそこから見えるハドソン川向こうの景色(米国本土)は別の色をしている。

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