2010年9月9日木曜日

必要は …の様なモノ

本日オバマは金融危機後としては2回目になる経済対策を発表した。一回目は大統領に就任早々の2009年、総額80兆円に上る経済対策を発表した。そして、一回目の支出がまだ終わっていない中、本日減税を中心とした新たな20兆円の経済対策を発表したのである。

ただそもそも今回の発表の本質は景気対策というより選挙対策。中間選挙で苦戦が予想される民主党議員を少しでも応援するための話である事は明らかである。だが前回の80兆円が効果を上げていない様に、今の米国の苦境はこの程度の対策でどうにかなるものではない。

そんな八方ふさがりに憤慨し、ノーベル経済学者のクルグマンが先週ついに「…の様なモノ」が必要だと言ってしまった。「…の様なモノ」とは戦争の事である。彼は米国は第二次世界大戦への参入に際し、当時のGDPの2倍、今日の金額で3000兆円の財政拡大を断行した事を触れている。(記事参照) 

国家の危機という異常事態の中、3000兆円の膨大な財政出動を断行した当時と比べれば、オバマ政権の前回の80兆円と今回の20兆円、合わせ100兆円にしかならない経済政策は、クルグマンには子供だましの政策に映るのだろう。

確かに、1000万人が徴兵として「新規雇用」され、太平洋戦争だけでも7000隻の軍艦が造られ(リモデリングが多い)、億を超える銃器と4兆発の弾丸が製造された需要は巨大だった。だがクルグマンよ。貴方は経済学ではノーベル賞を貰ったかもしれないなが、歴史と自然科学、つまりは万物の原理で米国は最早1938年に戻れない事を知るべきではないだろうか。

そもそも資金調達で70%を外国の資金に頼る今の米国にとって、100兆円の新規調達も大変な負担である。「米国にはソブリンリスクがない」というこれまでの概念が、欧州や中国では揺らぎ始めている現在、オバマ政権も非常に神経質になっている。ソレを現わしたのが今日の発表の仕方。政権は今回の対策は減税を中心に効率を優先、決して支出優先ではないとメデイアに強調している。

そこまで強調するのは、クルグマンの言うようなとんでもない金額を言い出せば、米国の金利が上昇してしまう事を心配しているからだ。今この国が一番怖がる事、実はそれは金利が上がる事である。

デフレ懸念で日本人がせっせと米国債を買ってくれている間まだ安心。だが景気が回復する前に金利があがるソブリンリスク(国債の信用危機)と、スタグフレーション(不景気だが金利上がる現象、70年代オイルショックが例)になると、今の米国はアウトである。

その時はクルグマンの言うように本当に戦争でも始めるしかない。だが、敵を造ろうにも、今の時代に米国だけの都合に付き合う国は限られている。前回待ってましたの敵になってしまった日本は今は属国。ならばその植民地からできるだけ富を吸い上げ、新たな策が出るまで時間を稼ぐ事が今の米国の日本統治の本質である。

だが日本の献身にも限界がある。吸いつくされた日本がボロボロになるのは戦後の日米関係を断ち切るうえで越えなければならない運命として、ソレでも米国が立ち直るシナリオはまだ自分には見えない・・。


参考: クルグマンの記事

http://www.nytimes.com/2010/09/06/opinion/06krugman.html?_r=1



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