2011年6月7日火曜日

新ウォール街物語 (顧客レター)

その昔証券会社に就職を決めた時、知り合いに勧められた小説があった。清水一行の「兜町物語」。今の市場関係者は殆ど知らない古い話だ。70年代から80年代にかけてのバブル前夜、証券の世界でガリバー野村に挑戦した当時万年2位の日興証券の社長の話だった。

ここからは小説というより先輩から聞いた話。どちらかと言うと証券会社としてはおっとり型の日興で、天皇と言われたその社長の株式編重は異常だった。結果その時代の同社の国際畑の有望株も多くが国内に呼びもどされた。その中にはモスバーガーの創業者の桜井氏、80年代テレビでの相場解説の先駆者だった三原氏、また市長から議員に転じた岩國氏などがいた。

社長は戦後の証券不況で山一に続き日興が倒れかかった時、資金部長として興銀系だった日興を三菱の懐に飛び込んで助けた英雄、同社で彼に意見出来る人はいなかったらしい。そういえば、入社後に観た彼の写真からはリーマンのファルド氏と同種の威圧感があった。

そして、執念が実り日興は野村を追い詰めた。ネック&ネックの激闘を繰り広げながら、大納会当日まで株式手数料で野村をリードしたのだ。出身が関西の野村に対し、日興創業者の遠山氏を知る東証関係者はそこで日興の大金星を祝う準備をしたらしい。だが、大引け間際、野村は「科研製薬」に巨大な「クロス」を振った。日興は野村に届かなかった・・。

さて、米国ではGROUPONが上場する。同社の2010年の売上は720ミリオン前後、だがおせち料理の不手際で日本でも話題になった通り、収益は400ミリオンの赤字だった。ところが、2011年は破竹いの勢い。1Qだけで売上は600ミリオンを越えた。しかしそれでも前年のEPSが赤字の赤子企業がIPOで750ミリオンを調達するのはどうか。

まあこれがバブルかどうかの議論はバロンズに任せるとして、ここでの注目は主幹事争い。GSは今日も古傷が話題だったが、 やはり同社のイメージは悪い。GROUPONも含め、このところの話題のIPOは全てモルガンスタンレーが主幹事である。

だがそのモルガンスタンレーもEPSが550倍のLINKEINはFAECBOOKへの期待から 上手くいったとはいえ、中国版FACEBOOKのRENRENでは1週間で公募の半額になってしまった。GROUPONはGSのブランクファインが態々シカゴ本社まで出向いて主幹事奪取を狙ったが失敗。これに対し、今はGSが押さえていると思われる超大物のFACEBOOKのIPO主幹事をモルガンスタンレーは狙っているといわれている。

攻めるモルガンに守るGS。どうやらこれが新しいWS物語らしい。最後に、日興はこの時の無理がたたりその後は3位に定着、そしてほどなく社長は亡くなった。 まあ仁義なき戦いを繰り広げるGSとモルガンスタンレーにこの国のIPOがバブルかどうかを聞くのは無意味だろう。









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