2011年6月10日金曜日

ロンパールーム (顧客レター)

一体何から話すべきか。まずGROUPON.。昨日Sucharita Mulpuru ( Forrester Research)というアナリストが、「同社のIPOは会社の価値を測るモノでなく、誰が馬鹿な投資家かを測るIPOである」と強烈なコメントを出した。早速CNBCもGROUPNの特集を組み、GROUPONが用いた会計手法は他の上場準備会社の会計とは異なり、売上600ミリオンは実際には70ミリオンにしかならないという会計士の意見を紹介した。何だそりゃ?。続いて直近のIPO33社のうち、26社が公募価格を下まわって現実が紹介された。その主流を占める中国系企業では、業績の数字が疑わしいという事で現在14社が取引が中止されている真実も判った。これを受け、「中国企業は米国からビジネスモデルを盗み、そして実態を隠して米国の投資家から資金をだまし取っている」と怒りぶちまけるアナリストの意見も登場した。だがまてよ、そんな事は中国では当然ではないか。筆者からすれば、あの金融危機から僅か3年で、米国がそんな企業を引受公開させたというこの国の更なるレベルとモラルの低下の方が問題である。

そしてIPOの多くを手掛けたモルガンスタンレー。CEOはオージーのJAMES GORMAN氏。彼を金融セクターアナリストとして影響力があるDICK BOVE氏は高く評価する。これはモルガンに投資している三菱には朗報。確かにこのCEOは日本人が好む華美を抑えるマネジメントをしている。だがBOVE氏は20ドル台のCITIを一生に一度の買いと言っただけでなく、同じ頃カントリーワイドの買収で意気揚々のバンカメのケン ルイス会長を「誰も到達できないレベル」と持ち上げた。当時ここでは「カントリーの買収は狂気の沙汰であり、ルイス会長はCITIのワイル会長になろうとした田舎社長」との酷い表現でこき下ろした。そして今、逆の意味でルイス氏はCEOとして誰も到達できないレベルだったのは、カントリーの後始末に明け暮れる現モナハンCEOが一番知っているだろう。にもかかわらず、本日シラー博士(ケースシラーの)が米国の住宅市場は此処から25%下がる可能性があると警告したように、BOVE氏はバンカメはカントリーの負債で30~40ビリオン損失を被るとして先週はバンカメを格下げをしている。何だそりゃ?一体この程度のアナリストの影響を受ける今の米国の株式市場とはどうなっているのか。結論は一つ。真実などどうでもよい。相場が動けばよい。そして相場は動くかす人が正しいのだ。つまりそれだけカネが有り余っており、運用者の多くは自分の腹が痛まない防御服を下に着ている。この光景を観て思い出したのは、子供の頃に再放送を観たロンパールームだった・・

そしてそこにまだ資金を投下しようとするFED議長がいる中、ゲーム化した市場を助長するのが米国の法制に対するアレルギー体質。そもそも米国は憲法でさえ建国以来修正条項は僅か27に過ぎない。そんな国に300を超える新しいルール(ドットフランク)を持ってこようとしても簡単に進まないのは当然。そしてこの国が合衆国である現実。これは日本人が知っている様で実は全く知らない世界。例えばデラウエア。この小さな州にフォーチュン500の半数近くが登記している。WSの金融機関は粗100%だ。するとどうだ、金融危機の主役のリーマンの経営陣はあちこちから訴訟を起こさたが今のところデラウエアの法律に守られて誰も刑務所に入っていない。なぜならこの州の法律では、そこに登記された会社がどうなろうとも経営陣を「過失」で有罪する事は出来ないからだという・・(NYT)。

この矛盾がTOOBIGTOFAILの温床になり、次の金融危機に引き金になるであろう事を知っている人は知っている。ジェイミーダイモンもその一人。彼はそれを知った上で昨日はバーンナンケに挑戦したのだ・・。(カンファレンスでの規制当局としてのFEDに対する挑戦)。いずれにしても、多くのプロが値動きを追っかけるだけの中で、一体どれだけの人がその先を考えているのだろうか。答えはゼロに近い。筆者は本業で日本を代表する大手機関投資家と話す。彼らは必死でこの様な金融市場で世界を相手に闘っている。デフレの日本に金融のチャンスはなく、仕方が無いのだ。だが彼らとて最後はTOOBIGTOFAILと言ってよい。問題は日本の個人投資家。日本の個人投資家は恐らく何も知らない中で値動きを追っかけ、そしてやられてもその損失はだれも救ってはくれない。そんなことでは日本の復興もままならないであろう。ならば筆者も情報提供の対象を変える時が近づいている・・。




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