昔在籍した日系大手証券では2回の不祥事を経験した。会社は大打撃、社長は交代した。2回目の不祥事の際は既に米国法人への駐在員だったが、同時に起こっていた金融再編の大波の中、国内畑ではない新社長は迷わず外資との提携を選択した。
2度目の不祥事で、本流である国内営業出身に社長候補がいなくなった事がその後の自分の人生にも多大な影響を及ぼした。なぜなら、この時点で国内営業出身が再び新社長になっていれば、親密な財閥グループとの関係を無視して外資との提携に突っ走る事はなかったと考えるからだ。
その場合は自分は駐在任期の5年前後で普通に帰任してはずだ。そして今頃はどこかの証券会社の営業店で働きながら、米国の政治経済とは無関係な静かな人生を送っていた想像する。
さて米国でもウォール街は2002年の不祥事に続いて2度目の不祥事に揺れている。これはサブプライムによる資産悪化とは別の角度からの打撃だ。十分な商品説明を怠って販売した債券の買い戻しを余儀なくされたCITI株は下落。また本日は途中まで頑張っていたダウ平均もAIG社(米国の大手保険会社)の格下げ伝わると底が割れた。そして引け後にはメリルが債券の買い戻しを決定。CITIに続いたのである。
CITIとAIGそしてメリル。この3社は米国のサブプライム問題のビッグ3だ。以前ここではなぜこの3社のサブプライムの金額が突出したか、その持論を述べた。復習になるが、この3社は2002年の不祥事で永く君臨した中興の祖ともいえる会長が全員あのスピッザー(元NY州司法長官)によって辞任に追い込まれた。そして混乱の中で急遽後継者を選ばなければならないというパニックに落ちた点が共通していたのである。不祥事では他の金融機関でもトップの交代はあった。ただ長期に渡り絶対的権限を持っていた「老人」が後継者を指名しないままフォースアウトされたのはこの3社だった。
ところで、今回の不祥事が一番響くのは個人的経験からはメリルだとみる。なぜなら本日メリルはCITIに遅れて顧客からの債権買い取りに応じる事を決定したが、CNBCによればその理由はサイン会長の判断ではなく、支店のブロカーによる突き上げが本社に向けてあったからだという。
当然だ。CITIは買い取り応じたが、メリルは応じない・・と言う事態は歩合セールスのメリルのブロカー群には許されない。今回の不祥事がメリルに一番影響与えると考えた背景は、再建の手腕を期待されたサイン会長はどうやらメリルの強さの泥臭いリテールビジネスへの感度が鈍いからだ。
一方サイン氏は40億円を前金で払いGSから大物を雇った。大物はメリルでの職務が自分のイメージと違う場合、支度金の返還なしにいつでも辞められるオプションを貰ったという。こが力を発揮すればよいが、そうならなかった場合の会社の求心力はどうなるのだろうか。
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