2008年8月16日土曜日

<今日の視点>五輪CMの正しい見方

五輪報道を独占するNBCは放映権に860M、そして系列のCNBCとMSNBCまで含めた大船団を派遣して番組を中継する制作費に100M、合計1Bの投資をしている。安くはない。ただそのかいあってここまでの視聴率はアトランタ以来で最高である。そしてその中心が言うまでもなくマイケルフェルプスだ。ただ彼も後二日で競技を終える。その後も視聴率を稼げるかどうか、陸上やバスケットなど、米国人が興味を持つ競技での活躍が鍵になるだろう。

さてそのオリンピックが始まってからNBCでは朝夕の看板番組の「TODAY」「NIGHTLY NEWS]のスタッフも全員北京入りし、そこから毎日のレギュラー番組を放映している。また日曜はあの「MEET THE PRESS」でさえも、急死したTラサートの後を受けたトムブロコー氏が北京から国内政治の討論をしている。ここまで来るとさすがGEとでも言うしかない。

NBCの親会社はGEだ。そしてGEは米国企業として中国の根幹に脈々と楔を打ち始めているのは言うまでもない。更にここでNBCが米国内へ中国文化の宣伝を大々的に担当する事で、今後の米政権がだれであっても、また新しい議会がどこまで反中国になっても、GEが米国企業として中国に多大な協力をした事実は残る。個人的に中国はこの種の恩には報いると見ている。従ってNBCの1Bの投資はGEの世界戦略には安い投資だったのかもしれない。

ただそうは言っても今回NBCがチャージするCM枠は高額だ。よってその枠の購入者はコカコーラなどの優良企業が多い。しかし1社だけ格付け機関からサブプライムと同格のジャンクの格付けを承った会社がある。言うまでもないGMだ。そのGMのCMは美しく、演出としては見事。そしてその美しいGMの象徴として演出の中心に据えたモデル車はGMが今年コンセプトカーとして発表したクリーンエネルギー車だ。

このCMを見るとGMは直ぐにもエコ車を大量生産できる最先端のメーカーの様な錯覚に陥る。しかしそれは錯覚。だからGMは今ジャンク扱いである。私自身トヨタのハイブリットにのっているので今の米国のハイブリット車の環境を知っている。その意味ではこのGMのCMは詐欺だ。なぜならGMはBIG3 の中で最もエコ対応が遅れ、CMの演出と事実がかけ離れている。フォードはプライドを捨ててトヨタから重役を引き抜き、エンジンは真似て取り敢えず4車種にのっけて走り出した。しかし評価は惨憺。まず生産が追いつかない。そして、どこのショーウインドにも実際はハイブリット車がない。これも詐欺だ。そして一番の問題は、BIG3はハイブリットに問題が出た場合、それを直すメカニックを十分確保できていないまま走り出してしまった事だろう。

そもそも米国ではハイブリットで先行したトヨタですらまだ専門技術者の養成は不十分。トヨタはハイブリットを直せる技術者をデイーラー間で巡回させている状態である。フォードはトヨタの現地経営陣を何人も高額で引き抜いたが、高度な技術を持ったメカニックまでは手が回っていない。そんな中でトヨタを脅かすのはホンダである。ホンダは先月からカリフォルニアで200台の水素カーのリース販売を開始した。昨日CNBCではその試乗リポートを中継したが、シカゴでBIG3も担当するリポーターは実車してその性能に驚嘆していた。

さてGMはCMの主役の未来カーを2010年からの販売予定と態々CMで流している。しかしホンダが「水素カー」を600ドルで貸し出した今、いつ生産ラインにのるかも判らない「コンセプトカー」をCMの主役にすえなければならない現実がGMの苦境を物語る。ただその一方でGMは中国で結果を残している。またGEと並んでGMも米国の国益を代表する会社である事は間違いない。

いずれにしても優秀な技術者の血脈が生きるトヨタとホンダは今後も商品開発力では負けないだろう。ただこの北京オリンピックを政治も含めた壮大なビジネスチャンスとしてポンと1000億円を出すような米国企業の度量が日本のメーカーにはあるだろうか。残念ながら技術力だけで世界を制覇した歴史はない。GMの詐欺的CMを見ながらも実はこれも採算が合うのかもしれないと感じている。

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