歳をとるとオーバーワークからの筋肉痛は時間を置いてからやってくる。だが400球以上を投げても疲労を感じないと言っていた上野選手はまだ20代。やはり彼女は特別な体力の持ち主だ。さて、その末梢神経の伝達力という意味で老体だったのは今週のOIL市場だ。2週間前に起こったグルジアを材料に週明けから反発していたが、ただやはりそれには無理がある。昨日のOILの5ドル高を境に商品のショートカバー劇は一旦は終焉するだろう。
ところで、オバマは副大統領の発表を予定より遅らした。これは明らかに何の修正が行われている証拠である。既に何人かには話したが、オバマ陣営は予定にはなかった「ヒラリーカード」を切らなければならない状況になってきたとみている。理由は以前より浸透していたバカバカしいほど単純な予想が一つ一つ実現しているからだ。
まず「バカバカしい単純な予想」とは何だったか。ソレは元々誰が候補者になっても苦戦が予想された共和党の選挙戦略として、懸念された国内経済の悪化によるドル安と更に苦しくなっている一般消費者の怒りの矛先をかわす為、選挙戦が本番になる8月前後、北京オリンピック前後からブッシュ政権は水面下で態と世界情勢を不安にする様な行動に出るだろうとの予想だった。
今週はブッシュ政権の東欧戦略担当者が、「グルジアのサーカシビリに軽挙は慎むようにと注意していたが、彼は言うことを聞かなかった・・。」などと発言をした。だがそんな話を信じている専門家はまずいないだろう。要するにここまで起こっている事は全て筋書きがあったドラマだ。先を考えてきた人にはそんな単純な展開が実際に起こってしまう今の世の中があまりにもばかばかしいのである。
問題はこの共和党のゲームにはロシアのプーチンにもメリットがあり、実は彼もブッシュに協力している事だ。危ないゲームだが、個人的にはブッシュとプーチンとの間で更にもう一段の緊張悪化、場合によっては通常兵器による直接交戦の程度までは握られている可能性は十分ある。なぜか。ロシアのプーチンが抱える悩みは資源高騰という追い風の中でいかに資本の原理の活用と旧来の特徴である統制力の復活を実現させるか。その意味で一旦は西側世界の温風で溶けてしまったロシア国内の緊張感を戻したいと考えている。要するに北京でも不振のロシアには国威向上への別の誘引が必要なのだ・・。
そしてこの事態はオバマも十分承知している。よってここからの共和党への対抗策の選択も二つ。同じ土俵で勝負するか。しないかである。同じ土俵で勝負する場合、オバマにとって必要なのは2004年の大統領候補でもだったクラーク長官の様な軍事と内政の両面で補完が成立する人。そして同じ土俵の勝負は避け、窮地の労働者に直接的な支援を行うキッチン&シンク或いはブレッド&バターの戦略に出る場合は絶対にヒラリーの存在は欠かせない・・。
さて個人的に今回の北京五輪にのめり込んだ最大の理由は、この2週間のドラマには筋書きがなかったからだ。この仕事を始めてから6年が過ぎたが、この間に没頭したのは国際政治と経済の筋書きの先読みばかり。そして用意された幾つかのパターンの中でも単純で最悪の展開が次々に実現して行く様を目の当たりする事に少々疲れた。ただその意味では自分ではBIG PICTUREと考えていた事は、実は誰もが見ていた目先の小事だったのかもしれない。
いずれにしても策謀渦巻くこの世の中では、考える人とそうでない人。その結果として知る者と知らない者。そして最後に生き残る人と死ぬ人の格差は広がる・・。
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