2008年8月22日金曜日

<今日の視点>奇跡の裏側

中国の劉翔ほどではないにせよ、ソフトボールで金メダルを逃した米国民の失望はコーチに向かうかもしれない。なぜなら日本との決勝で国民的な人気を誇る絶対的エースのジェニファーフィンチ選手を出さなかったからだ。ジェニファーは前回のアテネから米国のエースになり、アテネで米国の全試合の得失点差が51対1という次元の違う圧倒の原動力となった。

その後はその美貌から多方面で活躍。ESPNの「最も魅力的な女性アスリート」に選ばれると、そのままスポーツイラストレートの水着のモデルとしても登場した。更にプレイボーイ誌が大金を積んでヌード掲載のオファーを出したが断り続け、一昨年にMLBのスター選手結婚して女児をもうけた。そして今回の北京でもエースとして期待され、開会式当日に行われた大統領と米国選手団との会食会ではブッシュの隣に座り華を添えたのである。

しかしその絶対的エースのジェニファーをコーチは決勝で出さなかった。ただそれは前日の試合での日本の非力をみて油断したわけではない。なぜなら仮に日本を侮ったなら、米国民にとってマイケルフェルプスに次ぐ大会の華だったジェニファーを注目の集まる決勝に出さない訳にはいかなかったはず。恐らく左バッターが並ぶ日本にも強気で彼女を登板させただろう。しかしコーチは慎重だった。日本戦には二人の左のエースぶつけてきたのである。

準決勝で先発したアボットは大学でジェニファーの奪三振記録を更新した未来のエース。そして決勝で先発した黒髪のアスターマンはNCAA時代に20回のノーヒットノーランと10回の完全試合を達成した左の第一人者である。二人とも決してジェニファーより格下というわけではない。しかし世紀の番狂わせとはあの80年の「ミラクル」も然り、いろんな人間の判断が様々な形で折り重なって偶然引き起こされるモノである。スターであるジェニファーが金メダルを取る瞬間を見たいという国民の期待を裏切ってまで磐石に磐石を重ね臨んだはずの決勝。その決勝で米国はまさかの敗戦を喫した。敗戦後、詰め寄る記者に対して「ジェニファーは右投手だったので出さなかった」と監督は答えたという。ジェニファーは今どんな思いでいるだろうか・・。

0 件のコメント: