2010年6月10日木曜日

マードフからの手紙 (顧客向けレターから)

株は後になってみるとこのパターンも然るべしか。ただここまで脆弱な展開は久しぶり。そしてある意味今日のバーナンケの一言はこの相場の本質を代弁している。彼の景況感の発言は予定通り退屈だった。だが、TARP(金融危機での救済基金)について聞かれると、大手は既にTARPを金利を付けて返済した事を触れた上で、最大の懸念、AIGについは「時間を掛ければ大丈夫だろう」とバーナンケFRB議長は発言した。

元々大手の返済も裏でFEDの救済があって実現したわけだが、PIMCOに転籍にしたTARPのの担当者本人がその完済に悲観的な見通しを持つ中、AIGやGMもさることながら、マスコミが取り上げないだけで中小の金融機関に入れたTARPの欠損が確定するケースが出ている。その中でこのバーナンケの発言は何だ。彼の立場からすればコレしか言えないのは同情する。だがこれではFED議長は最早ヘッジファンドの運用担当者かあるいは証券会社のアナリストと同じ。言い換えればFEDが自身でリスクアセットを抱え、市場にプレーヤーとして参加し、また国庫(財務省)への民間の返済の裏方を務めているという事態では彼等は最早「バイブル」ではない。

そういえばあのマードフが獄中から被害者を「自業自得」との暴言はいたらしいが、ここでは以前からFEDの救済を国家ポンジーと呼んできた。そしていつのまにか中央銀行や国が救済を続ける事を、ギリシャ問題を切欠に市場は「ソブリンリスク」と呼ぶようになった。ここが神の仕業としか思えない所以。なぜならタイムの表紙にもなったバーナンナンケの救済を含め、市場があれ程評価した政府の救済を、今市場は逆に無意識のうちに「ポンジーリスク」を内包すると認めた事を意味する。米国でさえこのポンジーが使えなくなるかもしれない事態。それが今の本質である。

こうなると後は時間の問題。壊れるべきモノは壊れる。そして皮肉にもその引導は、バイブルが存在しない今の金融市場でバーナンケ本人が率先してまき散らした流動性がリスクオフに動く事で自滅へと突き進む構図がみえる。私は悲観論者のつもりはないが、今日の株の引けはその宿命を感じるに十分な引け方だった。そして今この宿命を米国人で最も認識しているのは、恐らく獄中にいるマードフであろう・・。



0 件のコメント: