面白いCMを観た。まずサッカーの試合で金髪の白人選手が競り合いで倒れる。痛がる選手に救護要員が駆け寄る。ただ持っているのはいつもの救急器具ではない。彼は無造作に整髪用ハサミと鏡で選手の髪を整えた。そしておもむろに立ち上がった選手は会場の女性に笑顔でアピール・・。このCMははサッカーに対抗してラグビー協会が流したモノらしい。そして続けて流れた「ラグビーでのぶつかり合いは演技ではありません・・とのコメントが久しぶりに面白かった。
さて、ワールドカップでは実力からしてあまりにも情けない終わり方のフランス。騒動を受けたウォールストリートジャーナルの見出しはレミゼラブル(ああ無情)。そして今日のニューヨークタイムスは、このフランスのDISORDER(秩序の欠如)をスポーツ記事としてではなく政治社会面で取り上げた。ただ、そんな中でDISORDERはこの米国にとっても他人事ではなくなった。これが本日の最大のニュースである。
今までここでは政権を担当する日本の民主党内のDISORDERを、国家としての危機意識の欠如としてきた。その点で戦時国家の米国は、一旦政権がスタートすると(少なくとも表面的には)ヒラリーがオバマの足を引っ張る事は絶対にないと断言してきた。ところがアフガン方面司令長官のマカリスタ将軍の政権批判は、その米国の根幹を揺るがす事態を招いている。
多くの日本人はその具体例を知らないが、米国は多種多様な人々がそれぞれの思惑で国家を形成している。だから政権は一糸乱れず大統領を支える事が絶対条件だ。その点で基本的に日本人が日本という国を構成しているニッポンは幸せ。だから政治も悠長だ。
そしてマカリスタ将軍は「イラクよりもアフガン」と言い続けたオバマが政権発足と同時に鳴り物入りで任命した人。彼の見事な経歴と、今も鍛え抜かれた身体からはオバマと同じカリスマ性が漂う。だがその戦時長官を大統領が罷免するとなれば、それはトルーマンがマッカーサーを罷免した時以来の異常事態である。そして、マッカーサーが性格に問題アリとされながらも英雄視されたのに対し、トルーマンが大統領の実績と比較してそこまでの人気がないのは、本来好戦的な米国人の本性の現れだろう。
この様に米国にはジョージワシントンを原点とする軍人の威厳を維持しながら大統領としても偉大だった人を英雄視するDNAが残っている。その意味でオバマは大きな岐路に立った。元々彼の弱点はCommander-in-chief(軍事行為における大統領の別名)としてのカリスマ性。現状ソレはあのカーターと比べても劣る。それは嫌戦の象徴であるベービーブーマー世代としては仕方がないが、政権を引き継いだ時点での大嵐は一旦収まり、重要な法案を二つも通したはずの彼への不満と諦めモードは高まっている。
BPへのオバマの対応も米国人が評価しないのは、恐らくこの弱点が見えてきたからだだろう。そして、ここにきて政権の重要命令を無視するアリゾナとルイジアナの例は、オバマ政権の求心力が衰える中で始まったDISORDERの象徴だ。実は米国の内情はフランス代表以上に深刻かもしれない。
(注)アリゾナ州は大統領の警告を無視して差別的移民法を施行。またルイジアナ州はオバマの沿岸油田採掘中止命令を無視する事を発表した。
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