2010年12月4日土曜日

忘れ去られた需要

今週末は子供のサッカーの試合がメンフィスである。よって早々に仕事は切り上げ、その準備をしなければならないが、夜に出て渋滞を避けたとしても、車で10時間はかかる距離だ。正直先週ニューヨークまで行ったばかりで気が重い。おまけに今晩から中西部は雪だ。だがこれも仕方がない。他に選択肢がない。実は米国には日本人があまり知らない欠陥が存在する。それは米国では日本や欧州では当前の高速鉄道網が全く整備されていない事である。

そもそも米国の鉄道は南北戦争時に北軍の物資輸送の目的と、ゴールラッシュで活気あふれるカリフォルニアの需要に応えて大発展を遂げた。恐らく19世紀の半ばにあれほど整備された鉄道網は世界のどこにもなかったはず。そしてこの鉄道がなければ、カーネーギーも鉄の為にあれほど大きなリスクを取らず、またロックフェラーが油田を次々に買収したところで運べなかった。バンダ--ビルドはその意味では彼等の可能性を引き出した米国タイクーンの中興の祖と言えるだろう。

だが、これほど輝かしい歴史の米国の鉄道は、その後極端に役割を縮小していく。逆に言うと、それだけ米国の航空網と自動車の発展が目覚ましかったのだろう。今では米国で最も早い高速列車の最高速度はせいぜい時速200キロ前後。そして実際は115キロ前後でボストンからニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンDCを走るのみ。理由は列車の性能はもう少し早く走れるものの、それを支えるレールがバンダービルドがアムトラックを創設した頃と変わらないからだ。

そんな中、今日は中国の高速列車が時速500でキロ以上の世界最速で来年から稼働する話が出ている。ならば世界標準との差において、米国がここまで遅れている現象は他に例があるだろうか。圧倒的に世界に先駆けて発展したはずの米国の鉄道は、今や世界標準からは骨董品である。これではシカゴからメンフィスまでの列車の移動時間が、車よりも3時間も余計にかかるのは仕方がない。

だが、だからこそ米国が本気でここを整備するなら、30年代のロックフェラーによる都心大改造や、フーバーによるダム建設に近い本物の需要が生まれるはずだ。そして、その可能性に気づいたオバマ政権は高速列車網の整備を先の景気刺激策の中に入れた。だがその予算は僅か80億ドルである。今の米国には、高速列車の車輛を造る技術もなければ、新幹線の様なシステム基盤もない。だが、これも金融市場に麻薬を流す効果しか考えられなくなった国家の宿命だろう、このれ程のチャンスに僅か80億ドルの予算とは・・。

これではあまりにももったいない、バンダービルドが墓場から怒っているだろう・・。




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