サンクスギビンの休日を挟み、シカゴから車でニューヨークまで行ってきた。時速120キロの走行で片道約12時間の旅は、インデイアナ、オハイオ ペンシルバ二アの「RUST BELT」(錆の地帯)と言われる嘗ての米国のモノ作りの中心を遡る道程だ。カーネギーの鉄がフォードの車になるまで、1960年年代までの米国の脂と汗がしみ込んだ地帯がどんな空気なのか、以前より興味があった。だが高速道路からの眺めだけでは何かを感じるまでは至らなかった。ただ一つ発見したのは、ハドソン川の西から見えたマンハッタンは、見慣れたイーストリバーの東からの眺めとは何処か違った事。以前CNBCの英国人キャスターが、「ハドソン川から西は景色が違う」との表現を用いていたが、ニュージャージーはマンハッタンに同化した川岸エリアを少し西に入っただけで、そこには「RUST」に近い「鉄錆」の雰囲気が漂っていた。それに比べればイーストリバーから東、ロングアイランドにはマンハッタンの景色を織りなす人々が住む場所がある。90年代、駐在員時代に住んでいたポートワシントンには特殊な地区があり、「華麗なるギャツビー」の舞台でもある超富裕層にとってはそこからのマンハッタンの夜景は彼等の特権であり一部だった。いずれにしても、多くの日本人が知りえる米国の情報のはハドソン川より東の人々が見た米国の世界。ならば時間に余裕がある人は、マンハッタンから車でハドソン川を渡って西に行ってみるのもいいだろう・・
ところで、ちょうど一年前、オバマ政権は憲法で認めれている「事実を発表しない」権利を発動した回数が、ブッシュ政権の8年間の総数を上回っている事を紹介した。元々この政権が発足した時から外交は聖人君子のオバマを冠し、実際は仮面を被ったクリントン政権下のベテランが脇を固めている言ってきた。(例えばルース大使が見せた涙など)だが、こんな形でその実態が公になるのは流石に政権も予想していなかっただろう。そんな中でWIKILEAKのアサンテ氏は次のターゲットは米銀大手と言明、結果米銀の一つ二つは崩壊するだろうとの予想までしている。これにはさすがに政権も動揺した模様で、1917年に整備されたESPIONARGE ACTでアサンテ氏を刑事告発するプロセスに入る構えを見せている。相場を傍観する立場としては面白くなってきたが、米国の同盟国の多くがこの問題は刑事事件ではなく政治問題と考える(ワシントンポスト)中で早速コメントを発したのが前原大臣だ。だが大臣の発言には誤りがある。アサンテ氏は嘗てはハッカーとして情報を盗んだかもしれない。だが今WIKILEAKが流そうとしている情報はその殆どが内部告発によるものだ。内部告発が横行する事態。実はこれが成長が終わった右肩下がりの民主主義の側面であり、米国が直面する最大のリスクである。その本質をすり替える大臣のコメントは、米国の窮地を承知の上で米国の味方をしているのか、あるいは勝手に勘違いしているのか。これは日本人にとって大きな差となろう。
そんな中で再び傍観者の立場で言うなら、中央銀行が自分で国債を買っている米国と、限界を理由に金利が上がる欧州は、どちらもピークは過ぎているとしても、本来はどちらにまだ健全性が残されているのだろう。そもそも欧州は人種と宗教が入り乱れながらが長年かかって今の形態に行きつた。その長い歴史からすれば一瞬である「今」に投資家がパニックになるのもどうか。それよりも米国の民主主義は前述の例も含めてこの国の歴史でも初めて直面する事ばかり。言い換えれば、筆者には欧州の落とし所はその歴史からすればまだ想像可能、だが一方の米国については17年も学んだつもりでもここから先の米国の落とし所は全く見えない。ならば傍観者の立場からは中央銀行の買い取りに残高をぶつけて歴史的な高値圏である米債からおさらばするのが本来は安全な判断に思える。だがそれはせず、更に米債を買い増している国があるとしたら、その国はかなり米国に精通し、筆者には見えない米国の将来に確信があっての事でなければならない。仮にどこかの国がその確信もなく、横並びと思考停止の場当たりの結果として米債投資を続けているとしたら、実はその国の国債が歴史的には一番のリスクという事になるだろう。まあそんな国はないと信じたいが。
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