2010年12月22日水曜日

ミネソタの男

ミネソタ州の人は自分達を米国で最もMODERATEと表現する。このMODERATEという言葉は穏健、控えめ、と言う意味だが、どうやら彼等は「我慢強い」と一番言いたいようだ。確かにミネソタの冬は寒い。一方短い夏もそれなりに内陸の特徴を持っている。まさに「アメニモマケズ」の世界だ。だがそのミネソタ経済は今も昔も堅調である。そしてそこにある野球チームがツインズ。そのミネソタの地に日本の野球人として初めてロッテの西岡選手が行く。大都会で日本人も多い海岸沿いの人気チームではないツインズで西岡選手がどう活躍するか。同じ日本人して注目している。

そしてそのツインズとシカゴのホワイトソックスはアリーグのライバル。昨年一昨年と、ソックスとツインズは最後まで地区優勝を争い、ソックスが優勝した年もレギュラーシーズンは互角だった。それゆえツインズの動向を気にしているソックスファンから早速筆者に西岡についてのチェックが入った。「イチロー級だよ」そう答えると、筆者が福留を然程評価しなかった事を覚えている彼は何とも言えないうめき声を出した。

ではツインズはなぜ強いのか。今でこそ大リーグを代表するマウアーがいるが、伝統的にツインズはスターのチームではない。選手獲得に大金をかけないところは大昔の広島カープ。だがその広島には山本や衣笠いた。ツインズはその意味でアメフトのバイキングスよりも地味でまたバスケットボールのティンバーウルフよりも常に好成績を残す点で最もミネソタらしいチームだ。

話は変わるがそんな中で日本では「坂の上の雲」がいよいよ佳境に入ってきた。先週の御前会議のシーンは歴代の大河ドラマの主役がそれぞれ重鎮役で一堂に会した重厚なシーンだった。この後の展開は二百三高地から奉天と日本海海戦のクライマックスに流れ込むはず。そこで一つ指摘しておきたい。前述の明治天皇の元で元勲が最終決断するシーンは、分解すると龍馬が活躍した維新からの薩長のOB会である。そして英雄視されるこの時代の帝国陸海軍も、山本-東郷の薩摩海軍ラインと、児玉-乃木の長州陸軍ラインの派閥争いに、秋山兄弟が絡んでいるにすぎない。よって、言い換えれば「坂の上の雲」は歴史の教科書に出てくる彼等の列伝になってしまうの当然の成り行きだ。だが世界史の観点で絶対に見落としてならないのは、厳しい自然の中で鍛えられた東北の兵士ではないか。司馬遼太郎もその事実を少しだけ触れている。小説では双方で60万が激突した世界史上稀に見る奉天会戦で、児玉が引いた正面の主力軍は東北出身者の部隊であり、3月の奉天では「南国」薩長のサムライの威勢の良さよさだけではどうにもならなかったとしている。

話をツインズとミネソタに戻すと、筆者が其処から感じる強さは、まさに「坂の上の雲」でもさらりと触れらただけの寡黙な東北人の強さである。英語で言うとMODERATE。そして時代を前後した欧州戦線では、ロシアの冬にナポレオン軍ももナチスヒトラーも勝てなかった世界史と比較すれば、名もない東北の男の強さはもう少し「坂の上の雲」でも特筆されてもよかったと考えている。まあそれは司馬遼太郎の仕事ではなく、宮沢賢治か藤沢周平の世界かもしれないが・・。



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