2010年12月15日水曜日

去る男、来る男 (顧客レターから)

危なかったが今日株が最後までプラスを保ったのはGEのおかげだろう。GEは増配を決定したが、GEの洗濯機を買い直す事にした我が家も僅かながら貢献をしてしまった。

ところで、FOMCの結果を確かめながらバーナンケが出た「60ミニッツ」を思い出した。彼は「いざとなればFEDは15分で利上げが出来る。インフレをコントロールする事への自信は100%だ」と語気を強めた。本当だろうか。

そもそもバーナンケは元々インフレ目標値を標榜していた人。つまり、もしかしたら彼は相場的なモノに対して嫌悪感があるのかもしれない。そして2008年の危機直前の「住宅市場は健全」発言など、バーナンケは「予想する」事に関して全く正しかった実績がない。

その人が「インフレを100%コントロールできる」と言っても、市場が信用できないのは実は無理もない事か。ならば債券市場の苦難は自分の予想を上回る可能性を覚悟しなければならないかもしれない。

さて、今日を最後にFOMCからホー二ングが去る。そこでNYTIMESはホー二ングの特集を組んだ。彼は以前ここでも触れた様に、アイオアで生まれ、中西部一筋の人生を歩んで来た人。そして紙面が新たに伝えたのは、FED関係者には珍しく、彼はベトナム戦線にも従軍していた事である。FED関係者のヒストリーは概ね頭の中に入っているが、ホー二ングに従軍経験があったのは知らなかった・・。

そもそも今のFEDなどは学位はあっても甘やかされたベービーブーマー世代の集まり。その殆どが東海岸出身者で占められ、同じところで生まれても議長時代のボルカーの様な狂犬は誰もいない。そんな中でホー二ングは異彩を放った。考えてみれば当たり前か、彼は中西部の生まれである。

その中西部の穀倉地帯は今でこそ「グレートプレーンズ」と言われるまでになったが、入植が始まった19世紀中旬は、インデイアンに襲われるは、コウロギの大群に襲われるはで、とても人間にやさしい環境ではなかった。そしてあの寒さ。この日曜もミネソタバイキングスの本拠地のドームの屋根が崩壊した様に、何よりもマザーネイチャーの力に人間が逆らう事が出来ない場所だ。

結果、入植が始まっても、19世紀の終わりまでに東海岸から着た人々の60%は入植を諦めて返ってしまったという。つまり、今その地域で生まれ育った人々は、その環境を生き抜いた人々の孫やひ孫達である。彼等にとって何が大切か。それは言うまでもない。甘やかされた人間が小手先の手段で取り繕ってもそれは続かないという自然の力、万物の原理が教える市場原理である。

そのホー二ングは、「回復過程は長く苦しいモノ。急いではいけない。その意味でバーナンケ議長は悪魔に魂を売った」とまで言った。国益を理由にそのバーナンケ議長を操っているのは東海岸の金融カルテルであるのは現実として正しい。ただそれも国家としては多数決が優先された結果。その構図は日本で言うと沖縄とそれ以外の差に等しい。だがホー二ングが去ってもバーナンケへの攻撃は終わらない。今度はあのロンポールが金融サブコミッティーの委員長としてやってくる。

ただサブコミッティーの立場は弱い。そこの委員長より、コミッティーのランキングメンバーの方が実際の法案審議には有効だろう。その意味でロンポールは上手く棚上げされたのかもしれないが、もし他の議員が皆でロンポールを支えれば、新コミッティー委員長のバッカスも無視はできない。来年はこの国の分裂模様がどうなるか、眺めるには面白い。だがFEDの事をよく知らない投資家は大変だ。自分が本当にFEDの事を知っているかどうか、まずは整理してみる事を勧めたい。






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