2011年3月25日金曜日

金融の正体

今日本では野菜に市場原理が働いている。原発事故の近隣の商品は暴落。逆にそれ以外の産地物は割高だ。ただでさえ被災地の人はお金が必要だというのに、市場原理とは残酷である。ならば市場原理の本家、金融ではもっと残酷な世界が広がっていると普通の人は考えるだろう。ところが、実体は全く逆である。

その一例が国債。日本を含め、今先進国の国債はどこも不健康だ。NHKも特集を組み、納税者が減り年金受給者が増加した日本の窮状を訴えていた。しかし、中でも最も破産に近いとされるポルトガルまたスペインの国債の金利を見ると、実は大した事はない。どれも5%~10%に収まっている。

確かに、水準は日本の1%台、米国の3%台と比べれば高い。だが金融危機が起こる前、米国債は6%の金利だった。ではなぜ健全だった頃の米国債の金利は、今の不健全なスペイン国債の金利よりも高かったのか。これは二つの理由で解説される。(文中の国債の満期は10年)

まずは成長率。当時の米国は、国が6%の金利を払っても、それ以上のリターンがあったと言う事。この場合株などへの投資は6%以上のリターンになり、その見返りで債券金利もある程度高くないと投資家は買わない。そしてもう一つはお金の絶対量。2006年と比べても今は圧倒的にお金の絶対量が多い。だから運用する人は「危ない」と判っている商品にも低リターンでも投資するのである。そしてこのお金の絶対量は金融危機の前にも空前の規模になり、それが原因で危機になった。ではなぜ同じ事が今また起きているのか。それは金融には市場原理が働かないかないからだ。それがTOO BIG TO FAILである。これは金融が危機を引き起こしたにもかかわらず、その原因を世の中は駆逐できない現象をいう。

では金融は世の中でそれほど特別な存在なのか。その通りである。だがら以前米国では一口に「金融市場」とは言うものの「金融」と「市場」を分けていた。簡単に言うと金融は銀行、市場は証券会社の領域だった。そして伝統的に銀行が主役だった日欧に対し、米国は市場が花形だった。つまり証券会社の方がカッコよかったのだ。だがそれゆえその派手さにおぼれた証券を米国は救わなかった。

そう。この頃までは金融市場にも市場原理があった。(それが映画ウォールストリート)ところがレーガン政権からの規制緩和を切欠に、それまでパートナーの自己資金で勝負していた証券会社が上場会社としてより多くの資金を持つようになった。そして金融と市場が最後の一線を越えたのがグラスステイーガル法の廃案だ。

これは大恐慌の原因になった銀行証券の混同を反省した法律だった。だがクリントンが99年にサインして廃案になると、銀行(例えばCITI)が市場で証券会社(例えばGS)に負けじと相場で勝負にでたのである。そしてまた同じ失敗が繰り返された。だが更に規模が大きくなっており、リーマンと言う小者を除いて個が責任を問われる事はなかった。(これがウォールストリート2)

リーマンは小者?。瞬間あれほどのインパクトだったリーマンが小者だったと言われては怒る人もいるだろう。だがソレが本質。そして先の危機で笑止だったのは、米国は証券を救う理由に窮して彼らに銀行の肩書を着せた事だ。おまけにQE1ではヘッジファンドにまで資金を提供した。そして証券も銀行も同じ低金利で(殆どゼロ)FED(中央銀行)から資金を調達すると、ソレをゼロよりは利回りの高さそうな全てのモノに振り向けている。

それが今の世界の金融市場の姿であり、膨大なマネーは株債券の金融証券を満たし、オイル、通貨の円、世界中の農地、そしてく最後は「水」にまで向かっている。こうなると運用マネーを持たない世界の大多数の人はどうする事も出来ない。彼らは「金融」が買い上がるガソリンや食べ物に悲鳴を上がるだけだ。そして米国は国家として金融の責任を追及するどころか、彼らをコントロールするグリップを完全に失っている。

つまりこのままでは「3度目の正直」は必然であり、それは1929年、2008年よりも更に究極的なモノになるはず。そして今日ここで「金融の正体」の話をした理由は、そのタイミングは恐らく日本の復興と重なると考えるからである。その時に日本の真価が問われるが、世界に惑わされず、己の価値観を確立していれば恐れる事はない。(ただそこが菅直人民主党政権の弱点だが)そして、独自の価値観という意味では日本の金融も然りだろう。災害の最中にメガバンクで振り込みに支障が生じた。日本の標準からすれば利用者は不満だろう。だが米国では銀行の間違いは日常茶飯事である。

彼らは相場のトレーダーには100億円を払っても、窓口のスタッフにはお金をかけない。日本にいる日本人は知らないだろうが、それに比べ、安心という意味では日本の銀行のレベルは圧倒的に高い。それは対面での窓口業務を大切にする日本の特徴であり、そこに膨大な人件費を懸ける日本の金融機関を外銀と単純比較するのは愚かしい。いずれにしても、人災である次の究極の金融危機で、日本だけは今回の天災からの教えが活かされる事を祈念するのみである・・。



<糠の効用>

ところで、そろそろトマトの種をまかなければならないが、2年前から始めた糠床も良い味になってきた。米国に来て18年。これらの作業は旨いトマト、旨い漬物を求めて自分で始めたものだ。ただ元々糠漬けはあまり食べなかった。なぜなら故郷には野沢菜があったからだ。それが10年程前、北陸名産の河豚の卵巣を食した時、猛毒を解毒する糠と塩の効用に魅かれた。そして北陸の人が大昔から食べてきたその食品の仕組みを今の化学では解明できないと知り、以後好んで糠漬けを食べるようにしてきた。だが家族には不評だった。この2年、自宅でケーキ教室を開く妻には糠の臭いは邪魔な存在。また米国で育った子供は糠床が人の排泄物と同じ色で、また臭いも似ている?とのことで蓋を取るだけでその場から去った。結局この2年間の熟成を食したのは自分だけだった。そんな中、福島原発の事が伝わると、米国でもEBAYでそれまで10ドル前後で販売されていた放射能汚染の抵抗薬のヨウ化カリウム粒がいきなり200ドルに跳ね上がった話が伝わった。

まあ米国はまだ金儲けの話、東京でペットボトルの水が瞬間に消えたのはそんな余裕のある話ではない事は承知している。だがここは冷静になるべきだろう。まず資源貧国の日本がヨウ化カリウムの原料のヨウ素に関しては超大国らしい。海藻が原料なら当前だが産出量は米国の5倍になるという。いずれにしても、大都会がパニックにならないためには、悪い話を早く流すだけではなく、隠された良い話も早く出す事も必要だろう・・。



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