そもそも中東問題といってもアフリカとアラビア半島では意味が違う。動乱はチュニジア、エジプト、そしてリビアに移ったが、オイル相場などへの影響の本番はアラビア半島に火がついた時だろう。そんな中で株式市場の注目は3月11日である。
アラブの盟主を争ったエジプトがこんな状態の中で、その日はサウジアラビアでも大規模デモが呼びかけられている。その動きを警戒し、サウジ王室は国民にオイルマネーを慌ててばらまいたのはご存じの通り。金で保身(平和)が買えるかどうか面白い実験となろう。
ところで、今年のアカデミー賞では久しぶりにいい俳優がいい演技をした芸術映画が作品賞を取った。ただそれは英国との合作。ここ数年、作品賞を取った米国映画は政治色が強く、芸術的要素は少なかった印象。またその政治色も70年代の様な社会派ジャーナリズムとも違った。言い換えればアカデミー会員の趣味に合うかだった。
そして大金をかけたハリウッド映画も、一本の出演料が十億と言われながら、簡単に戦略的破産で住宅投資失敗の借金逃れをするニコラスケイジの様な俳優に大枚を払っている始末。それに比べ60年代の作品賞は素晴らしかった。そんな中時節は50年前の作品賞、あの「アラビアのロレンス」を思い出させる。参考までに映画の冒頭でロレンスが道案内役のアラブ人に質問されるシーンを紹介する。
「イギリスはどんな国ですか?」「太った国さ、大きくはないが太った人間ばかりが住んでいる・・」
ロレンスのこの答えには当時の英国の立場が良く出ている。そして映画の最後、アラブ独立の為に戦ったロレンスが、当時のアラブの太守であり、現ヨルダン国王に通じるファイサルに別れを告げるシーン。ファイサルは、ロレンスと、そのロレンスと一緒に独立のために戦った国民を裏切るのを承知で保身のために英仏の策略に乗る。
「(アラブの独立が成し遂げられ)私はあなた(ロレンス)にどれ程感謝していいか判らない。だが若者よ、戦争の良さは若者の良さだ。皆が正義や目的に命をかける。だが老人は平和が好きだ。これからは再び老人がこの国をの運命を決める。ありがとう・・」この言葉を聞き、失意の中でアラブを去るロレンス。
この映画のファイサルの立場が今のサウジ国王だろう。彼にはオイルマネーがある。だが若者のエネルギーが金で抑えられるかどうかだ。ロレンスを失望させたファイサルは、その後現在のサウジ国王の父に敗北し追われた。そしてその初代国王が死んだあとは異母兄弟たちが順に国王を継いできた。ソレが今のサウジの姿だ。
ただ現国王のアブド―ラもすでに80歳半ば、その次は何人いるかわからない「プリンス」が自分の出番を待っている。まあそんな現実を忘れるほど映画の砂漠のシーンは美しい。またすべての戦闘シーンは生身の人間とラクダと馬が躍動している。CGに慣れてしまった今こそその美しさは際立つが、老人ばかりになった先進国にいてはこの映画も忘れさられるだけなのだろうか・・。
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