NHKの「なぜあの戦争に突き進んだか」シリーズの最終回を観た。良くできていたと思う。シリーズを通し、日本が戦争に突き進んだプロセスは垣間見えた。だが、今の日本への有効なアドバイスにはなっていなかった。なぜなら特集には重大な欠陥がある。
当時日本は、常識やデータで理解できる日米の差は上層部も認知し、誰も米国と戦争をするつもりがなかった事は新鮮な発見だった。だが悲劇につながった直因として、米国が状況によってどう変わるか、その予想の重要性と、その予想に基づいた合理的なリスクテイクの重要性について全く触れられていなかった。つまり戦略の欠如である。代わりに当時の指導者の決断力のなさ、あるいは組織論に埋没する精神的な弱さばかりが強調されていた。だがそれでは答えにならない。だから日本は今も重要な事をしらないままだ。それは今の日本の指導者がいまだに米国を知らないという事である。
こちらから見ていると、日本は米国の実態調査を自分ではしない事が一目瞭然である。国家はせいぜい役人をワシントン等の拠点に配置し、そこの有力者から情報を取るのみ。これはロシアや中東では有効な方法だろう。だがこの国では有力者は常に流動的である。そして有力者は無知な米国庶民につかえている。庶民がどう出るか。また彼らがその時々の政権にどのように誘導されようとしているかを知らずして、本来米国の次の一手など判らない。ところが、日本にはメディアを通し膨大な米国の情報が入ってくる。結果日本人は米国の事はよく知っていると思っている。だが、米国に対する日本の無知は今も全く変わっていない。
ところで、特集ではリーダーシップの欠如が日本の悲劇の原因の様に扱われた。だがそもそも聖徳太子以来の日本人の特徴の組織の和と、独断で決めるリーダーシップは平時には相いれないものだ。この二つが妥協するのは通常追い込まれてから。だが、サッカーならともかく、追い込まれてからの戦いは勝てない。ソレが本質である。あの小泉首相は日本が追い込まれてから登場したからそのリーダーシップで人気が出た。でも平時は彼は変人。そしてその彼もやりきる前に退陣すると政治はこの結果である。まあNHK特集は国民にその矛盾を理解させればよしとしよう。
いずれにしても、ロシアに国土を占領され、中国に国家の約束(ガス田)を反故にされ、呑気なオーストラリア人にも捕鯨船を攻撃され、そして命知らずの海賊もタンカーに襲われても反撃しない・・。どうか神よ、そんな日本を助けたまえ・・。
(本日のジャパンタイムスは、中国は日中共同開発の条約を無視し勝手にガス田の採掘を開始したという重大ニュースを掲載した。)
<ジャパンタイムス>
http://search.japantimes.co.jp/cgi-bin/nn20110309x4.html
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