2011年3月29日火曜日

オバマ政権の臨戦態勢

考えてみるとオバマほど数奇な運命の大統領も少ない。自らは平和の象徴のように思われノーベル賞まで貰った。だが歴代の大統領を振り返っても、任期中に3か国と別々の戦争状態になった大統領は見当たらない。難題を前任者から引き継いだとはいえ、彼自身の性格に起因するグリップの弱さも一因だろう。

特にリビア攻撃は後手に回った。背景は政権がクリントン人脈の意向を強く受けながら、防衛長官はブッシュ政権のゲーツ氏を残した歪さがあげられる。元々ゲーツ氏は米国のリビアへの参戦には否定的だった。ところが、93年のソマリアの失敗が尾を引き、ルワンダの大虐殺を傍観した米国を大統領夫人の立場から観たヒラリーは、今回リビアへの参戦に積極的だったという(NBC)。

確かに、週末の討論番組に出た彼女の顔は、娘の結婚を心配する母の顔から、政治家ヒラリーの顔に戻っていた。加えて、政権を取り巻くクリントニアンは、クリントン政権の功績とされるセルビア空爆によるコソボ終結の再現をもくろんだらしい。

いずれにしても、米国は、政権内の思惑のずれを修正している最中に、フランスのサルコジ大統領に先手を取られた。たださすがの米国もこれほど次々に紛争や自然災害が同盟国の日本で起こる事態には対応しきれない。シリアは手つかずとなり、そんな米国を見限り、サウジはバーレーンへの軍事介入を米国への通達なしに断行している。

この様に、中東はイランが頂点のシーア派対サウジ王室を頂点とするスンニ派の戦いを軸に、リビアとカタールの間に見られるアラブ特有の民族や利権をめぐる確執が交錯している。ただアラブ同士が共倒れになるのはまだいい。問題はバーレーン イエメンの親米政権が倒れ複雑なシリアも完全に原理主義になると、中東はいよいよイスラム原理主義がイスラエルを包囲する。こうなると世界は第二次世界大戦以来の緊急事態だ。

今の米国は中東ではこの最悪の事態を避けるべく最善を尽くす一方、難題をアフガン・パキスタンでも抱えている。ここも大変なのはパキスタン国内で殺人罪で拘束された米国人スパイの処遇を見ても判る。元来彼の存在が表に出てきてしまう事自体が異例だが、米国はパキスタン政府の指示に従って遺族に2億円を払った。あの貧乏なパキスタンでスパイの存在を露呈し、また犠牲者に2億も払う失態を演じながらもパキスタンの協力がなければアフガンも終わらない。

今、平和ボケが覚め、未曾有の天災に立ち向かう日本人からすれば、これだけの情勢をいっぺんに抱える米国はやはり凄いという見方もできるだろう。だがこんな状況は米国にとっても異例だ。こうなった事自体が衰退という見方もできるが、あの金融危機を引き継ぎ、休む間もなくこの事態に立ち向かうオバマ政権は凄い政権である。だが日本は決して米国を頼り過ぎない事、復興においてこの基本を忘れてはならない。


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